一戸建て住宅の査定価格を原価法で計算する方法

一戸建て住宅の査定価格を原価法で計算する方法

 

一戸建て住宅の査定は、土地と建物を分けて行うのが一般的です。土地の査定には取引事例比較法、建物の査定には原価法を用います。

 

ここでは、一戸建て住宅の査定価格を原価法で算出する方法について解説します。

 

中古木造一戸建て住宅の原価法による評価手法について、国が「建物評価の改善に向けた指針」を示していますから、あわせて紹介しておきます。

 

 

 

 

 

 

一戸建て住宅を原価法で査定する計算式

一戸建て住宅の査定価格は、土地は取引事例比較法で、建物は原価法で、それぞれ別々に計算します。計算式は、次のようになります。

 

[査定価格]=[建物価格]+[土地価格]

  • 建物価格=建築単価(円/u)×建物面積(u)×(1−築年数/耐用年数)
  • 土地価格=土地単価(円/u)×土地面積(u)

 

ここで紹介している原価法による計算は、あくまでも概略です。実際には、グレード等により補正係数があり、不動産業者によって採用する減価修正率等が異なります。

 

建物価格と土地価格の計算方法について、詳しく見ていきましょう。

 

建物価格の計算

建物価格の計算には、一般的に原価法を用います。原価法は、再調達原価から、経年劣化による減価修正を行い、価格を算定する方法です。再調達原価とは、同等の不動産を取得するのに要する価額のことです。

 

建物価格=建築単価(円/u)×建物面積(u)×(1−築年数/耐用年数)

 

計算式の[建築単価×建物面積]が再調達原価、[1−築年数/耐用年数]が経年劣化にともなう減価補正です。

 

建物価格の計算に必要な4つの要素(建築単価・建物面積・築年数・耐用年数)は、次のように求めます。

 

 

建築単価

建築単価(1uあたりの単価)は、国税庁の「建物の標準的な建築価額表」を参考にします。これは、国土交通省の「建築統計年報」をもとに、1uあたりの工事費予定額を算出したものです。

 

例えば、平成27年の建築単価は、次の額です。

 

平成27年の建築単価(建物の標準的な建築価額)

木造・木骨モルタル

鉄骨鉄筋コンクリート

鉄筋コンクリート

鉄骨

165.4

262.2

240.2

197.3

(単位:千円/u)
※国税庁「建物の標準的な建築価額表」より。

 

建物面積・築年数

建物面積と築年数は、登記簿から分かります。建物面積は登記簿に記載されています。築年数は、登記簿の築年月日から求めます。

 

耐用年数

耐用年数は、構造・用途ごとに「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で定められています。

 

構造・用途 細目 耐用年数
木造 住宅用 22年
木骨モルタル造 住宅用 20年

鉄骨鉄筋コンクリート造
鉄筋コンクリート造

住宅用 47年
金属造(鉄骨造) 住宅用

19・27・34年
(骨格材の肉厚別)

れんが・石造・ブロック造 住宅用 38年

※「減価償却資産の耐用年数等に関する省令・別表第一」より抜粋。

 

土地価格の計算

土地の評価額は、実勢価格(時価)による単価と土地面積から計算します。

 

土地価格=土地単価(円/u)×土地面積(u)

 

土地1uあたりの単価(時価)は、路線価を利用する方法と、実際の取引事例から評価単価(時価)を算出方法があります。一般的には路線価を使用しますが、路線価と取引事例を比較検討するのが理想です。

 

路線価は時価の8割なので、路線価を用いて時価を算出する場合は、0.8で割り戻す必要があります。

 

時価=路線価÷0.8

 

固定資産税評価額の7割戻しの方法もありますが、ほとんど利用されることはありません。固定資産税評価額を査定に利用すると、路線価に比べて安くなる傾向があるからです。

 

 

一戸建て住宅の原価法による計算例

一戸建て住宅の価格を具体的に計算してみましょう。次のような物件を想定します。

 

建物

  • 延べ床面積:100u
  • 築年数:10年
  • 構造:木造

 

土地

  • 土地面積:150u
  • 路線価額:20万円/u

 

上の一戸建て住宅を原価法で査定する計算式のところで示したように、木造住宅の標準的な建築単価は16万5,400円、耐用年数は22年ですから、この物件の時価は、次のように計算できます。

 

△建物価格
16万5,400円/u×100u×(1−10/22)
=902万2,570円

 

△土地価格
20万円/u÷0.8×150u
=3,750万円

 

△よって時価は、
902万2,570円+3,750万円
=4,652万2,570円

 

木造住宅の価格は、築22年超でマイナスになる!?

原価法の計算式から分かるように、減価補正係数が[1−築年数/耐用年数]ですから、木造住宅の建物価格は、築22年でゼロ。築22年を超えるとマイナスになってしまいます。まさに「負動産」です。

 

実際には、各種の補正係数があるため、一律に築22年を超えるとマイナスになるということはありません。しかし、築20〜25年で木造一戸建て住宅の建物価値はゼロとするのが一般的です。

 

考えてみてください。「築20年を超えた住宅には価値がない」などということはあり得ません。「住まい」としての機能は、まだまだ十分に備わっています。

 

しっかりと維持補修やリフォームをしていれば、逆に機能面では向上することさえあります。ところが、建物の耐用年数によって一律に減価修正するため、築後20〜25年で市場価値はゼロとなるのです。

 

現在、多くの不動産査定の現場で、原価法として用いられている評価手法には、こういう重大な問題があるのです。

 

 

中古戸建て住宅の建物評価の改善に向けた国の取り組み

中古一戸建て木造住宅は、建物の状態にかかわらず、一律に築20〜25年程度で建物の市場価値をゼロとする慣行があります。

 

それが中古住宅流通市場を活性化するうえで阻害要因となっていることから、国土交通省は「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」(2014年3月31日)を策定し、良質な維持管理やリフォームが行われている住宅が適切に評価されるよう、原価法の運用改善と建物評価のあり方を提言しました。

 

指針は、中古戸建て住宅の大半を占める木造を対象とし、他の構造の住宅を評価する場合の指針の援用については今後の検討課題とされています。

 

評価改善の基本的な考え方は、次の点です。

 

  • 住宅を「基礎・躯体」と「内外装・設備」に大きく分類し、基礎・躯体については、性能に応じて20年より長い耐用年数を設定し、例えば長期優良住宅であれば100年超の耐用年数とすることを許容する。
  • 基礎・躯体部分の機能が維持されている限り、リフォームを行った場合は住宅の価値が回復・向上すると捉えて評価に反映する。

 

従来のように、住宅の法定耐用年数によって一律に減価修正するのでなく、各部位の特性に応じて減価修正を行うことを提唱しています。

 

評価手法の移行期においては不動産業者選びが特に大切

指針で示された方向で建物評価が行われると、従来よりも査定価格が上がることが期待できます。ただし、そういった価格での売買が市場に浸透するには一定の期間を要するでしょう。

 

適正な査定価格を算定し、売主が設定した販売価格で売れるかどうかは、その物件の価値を認め、その価格を妥当と判断して購入する買主を見つけられるかどうかにかかっています。そういう買主が見つかれば、相場より高く売却することは可能です。

 

特に、査定方式の移行期においては、買主に物件の価値を的確にアピールでき、価格について納得させられる実力のある不動産業者を選定することが大事です。

 

まとめ

原価法は、同じ建物を現時点で建てた場合の価格(再調達原価)をもとに、経年劣化による減価修正をかけて、現在の価格を求める方法です。

 

従来は、住宅の法定耐用年数にもとづき、建物全体に対して一律に減価修正をかける方法が一般的でしたが、現在は、維持管理やリフォームが行われている住宅が適切に評価されるよう、建物の各部位の特性に応じて減価修正する方式に変わりつつあります。

 

このように評価手法の移行期においては、実力のある不動産業者を選ぶことが特に大切です。