ドライマウス対策のための「口の鍛え方」

口が臭いと思われないために 〜自宅で出来る口臭チェックと対策〜

 

年を取ると唾液の分泌量が減る。その影響で歯周病が進みやすくなり、口臭も強くなる。ひどくなると舌や粘膜に痛みを感じ、食事をとるのも難しくなるという。

 

ドライマウスを改善するには口の周りの筋肉を鍛えること。基本は「よく噛む」ことだが、最新の研究からカラオケに効果があることも確認されている。

 

健康な人は1日1.5リットルの唾液を出す

「年齢の"齢"には"歯"という字が入るでしょう。口は身体の中でも老化を体感しやすい部分。年を取ると歯周病で歯がなくなったり、口臭が強くなったり、口が乾いたり、味覚が鈍くなったりする」と話すのは鶴見大学歯学部病理学講座の斎藤一郎教授。2005年に歯科大学の附属病院で初めてアンチエイジング外来を開設した「口のアンチエイジング」の第一人者として知られる。

 

その鶴見大学歯学部附属病院のアンチエイジング外来では、@歯の本数、A歯周病の進行度、B唾液の分泌量、C噛む力、D嚥下力(飲み込む力)の5項目で、口の老化を診断する。

 

「口の老化は全身の老化を反映する。噛む力と全身の筋力が正比例するというデータもあるし、鶴見大学歯学部附属病院の外来で調べてみると、唾液の分泌量が多い人はDHEA(男性ホルモンの一種)のレベルも高かった」と斎藤教授は続ける。

 

50歳を過ぎると「ドライマウス」に悩む人が増える。

 

日本語では口腔乾燥症といい、唾液の分泌量が減ることで文字通り口が乾燥する病気だ。「健康な人は1日1.5リットルの唾液を出すが、重症のドライマウスだと分泌量はその10分の1になってしまうこともある」と斎藤教授。ドライマウスがひどくなると舌や粘膜に痛みを感じるようになり、やがて食事をとるのも難しくなるという。

 

唾液には抗菌成分が含まれている。それが減ることによって、細菌やウイルスにも感染しやすくなる。また、唾液の分泌が減ると虫歯菌や歯周病菌が歯や歯茎から洗い流されず、長時間定着するため、虫歯や歯周病の進行が早まる。

 

歯周病は歯が抜ける大きな原因にもなり、その影響は全身に及ぶ。

 

新潟大学大学院歯学総合研究科の山崎和久教授らの研究グループは、マウスの実験で、歯周病菌が血液の中に入ると、HDL(善玉)コレステロール値の低下を引き起こすことや、高コレステロール血症のマウスでは歯周病菌によって動脈硬化が顕著に進むことを明らかにした(PLoS One. 2011; 6(5): e20240)。

 

さらに、唾液分泌量の減少によって口臭も強くなる。腸内細菌と同じく、口の中にもたくさんの細菌がいる。唾液の分泌が減るとそのバランスが崩れ、「カンジダ菌などの悪玉菌が増え、その死骸の臭いが口臭になる」と斎藤教授は話す。

 

現代人にとって、口臭は大きな問題だろう。2013年にデオドラント商品などを販売するブラシナが、20〜50代の男女約600人に「職場で気になる他人のニオイ」を調査したところ、「汗の臭い」や「加齢臭」といった強敵たちを抑え、「口臭」がダントツ1位だった。実に60%以上の人が「気になる」と答えている(グラフ参照)。

 

 

「唾液は糖尿病、ストレス、筋力の低下、服薬などで分泌量が減るが、心身ともに健康な人は、年を取っても唾液が減らない。唾液の分泌量は心身の健康度を表している」と斎藤教授は指摘する。

 

 

よく噛むことで唾液の分泌量が増える

唾液の分泌量を増やし、歯周病や口臭を防ぎ、いつまでも清潔で若々しい口元をキープするにはどうしたらいいのだろう? 斎藤教授に対策を聞いた。

 

ブラッシングとクリーニング

基本は毎日の歯磨き。ブラッシングによって歯垢を取り除き、歯茎の血行を良くする。さらに、「半年に一回は歯科医院に行き、プロにクリーニングしてもらうことが大切」と斎藤教授はアドバイスする。

 

よく噛む

歯磨き後に、歯と歯の間にデンタルフロスを通します。フロスに付いた歯垢の匂いを嗅いでみます。匂いが気になっても大丈夫。フロスや歯間ブラシを使えば、歯垢は85%除去できます(高世ら)。

 

タバコを控える

タバコは口臭が強くなるだけでなく、歯周病にもなりやすくなる。1万2329人を対象にした米国の調査によると、タバコを吸わない人に比べて1日20本吸う人は4.72倍、31本以上吸う人は5.88倍も歯周病になるリスクが高まる。ニコチンが歯茎の血行を悪くし、タールによって歯垢が落ちにくくなるためだ。

 

むやみに薬に頼らない

医薬品の副作用でドライマウスが起こることも多いという。「日本の医薬品の使用量は欧米の40倍とも言われるが、降圧薬、睡眠薬、抗アレルギー薬、抗うつ薬など、多くの薬に唾液の分泌量を抑える作用がある」と斎藤教授。ちょっと調子が悪いから、と安易に薬に頼るのも考えものだ。

 

人と会ってたくさんしゃべる

口の周りの筋肉を鍛えると唾液腺も活性化し、唾液の分泌量が増える。そのためには積極的に人と会うことも効果的だ。会話を交わし、口角を上げて笑うことで、自然に口の周りの筋肉が鍛えられる。

 

カラオケに行く

斎藤教授らが60歳以上の高齢者44人(男性10人、女性34人)に好きな曲を3曲歌ってもらった結果、唾液の量が増え、コルチゾール(ストレスホルモン)は減った(グラフ参照)。

 

 

なぜ歌で唾液が増えたのかというと、「口の周りの筋肉を使ったというフィジカル面と、歌うことで副交感神経が優位になったというメンタル面、ふたつの理由が考えられる」と斎藤教授は解説する。

 

 

「歌が嫌い」な人でも歌えばストレスが解消される

コルチゾールが減ったのも、リラックスして副交感神経が優位になったため。「歌のストレス解消効果」が医学的に証明されたわけだ。

 

斉藤教授によると、「歌が好き」な人だけに限らず、「歌が嫌い」な人も効果は変わらなかったという。

 

「楽しくないときも、笑顔を作ることで楽しい気分になる。それは笑って楽しかったときの記憶がよみがえるため。歌うときは表情筋が動くことで、幸せだった記憶、楽しかった記憶がよみがえり、コルチゾールが下がるのではないか」と斎藤教授は推測する。

 

歌はストレスを解消し、唾液を増やして「口の中」から若返らせてくれるというわけだ。口臭予防やアンチエイジングのため、がんがん歌いまくってほしい。